はじめに:和装小物ってなんだろう?
「よし、着物を着てみよう!」そう思ったとき、主役である着物や帯にばかり目が行きがちですよね。でも、ちょっと待ってください!実は、美しい着物姿を完成させるためには、たくさんの「和装小物」たちの力が不可欠なんです。まるでオーケストラの楽器のように、それぞれが大切な役割を担っていて、一つでも欠けると着付けができなかったり、全体のバランスが崩れてしまったり…。
でも、「和装小物って種類が多すぎて、何が何だかさっぱり…」「どれを揃えたらいいのか分からない!」と感じている方も多いのではないでしょうか。かくいう私も、最初はちんぷんかんぷんでした(笑)。腰紐と伊達締めって何が違うの?帯枕って必要なの?なんて、疑問だらけでした。
この記事では、そんな和装小物初心者さんに向けて、特定の商品は一切紹介せず、純粋に「お役立ち情報」だけをギュギュっと詰め込みました。それぞれの小物が持つ役割や種類、選び方の基本的な考え方から、季節に合わせた使い分け、さらにはお手入れや収納方法まで、体系的に、そしてできるだけ分かりやすく解説していきます。この記事を読み終える頃には、「なるほど、和装小物って奥が深いけど面白い!」と思っていただけるはず。さあ、一緒に和装小物の奥深い世界を探検してみましょう!
まずはコレ!着付けに絶対必要な基本の和装小物
何はともあれ、着物を「着る」という形にするために、最低限必要な小物たちをご紹介します。これらがないと始まらない、まさに縁の下の力持ち的な存在です。いきなり全部揃えるのは大変かもしれませんが、まずは「こんなものがあるんだな」と知ることから始めてみましょう。
肌に直接触れるもの:肌着・下着類
洋服を着るときに下着をつけるのと同じで、和装でも専用の肌着が必要です。着物を汗や皮脂の汚れから守り、着心地を良くするという大切な役割があります。
肌襦袢(はだじゅばん)
着物の下に一番最初に着る、上半身用の肌着です。主な役割は汗を吸い取ること。着物、特に正絹(しょうけん)の着物は水に弱く、自宅で気軽に洗濯できるものは少ないです。汗ジミができてしまうと、専門のお手入れが必要になって高額になることも…。そうならないためにも、吸湿性の高い肌襦袢でしっかり汗対策をすることが重要なんです。
素材は、肌触りが良く吸湿性に優れた綿のガーゼ素材が一般的ですが、最近では機能性の高い化学繊維のものもたくさんあります。袖の形も、筒袖のものやレースがついたものなど様々。まずは、ご自身の肌に合う、着ていて気持ちが良いと感じるものを選ぶのが一番です。
裾よけ(すそよけ)
肌襦袢が上半身用なら、こちらは下半身用の肌着。腰に巻き付けて使います。主な役割は、足さばきを良くして歩きやすくすること、そして静電気を防ぐことです。特に冬場の乾燥する季節は、裾よけがないと着物が足にまとわりついて歩きにくいことがあります。
素材は、滑りの良いキュプラなどがよく使われます。肌襦袢と裾よけが一体になった「ワンピースタイプ」の和装スリップも人気です。上下が分かれていると着崩れが心配な方や、着付けの手間を少しでも省きたい方には、この和装スリップが使いやすいかもしれませんね。
足袋(たび)
足に履く、日本の伝統的な靴下のようなものです。指先が親指と他の四指に分かれているのが特徴ですね。足袋を履くと、足元がキュッと引き締まり、立ち姿全体が美しく見えます。
素材は、フォーマルな場面では「キャラコ」という綿素材のものが基本です。普段使いなら、伸縮性があって履きやすいストレッチ素材のものも便利。足袋は「こはぜ」と呼ばれる爪型の金具を「受け糸」に掛けて留めます。こはぜの数は4枚か5枚が主流で、5枚こはぜの方が足首を深く覆うため、よりフォーマルとされています。サイズ選びがとても重要で、自分の足の実寸に合ったものを選ぶのがポイント。大きすぎるとシワが寄ってしまい、見た目があまり美しくありません。初めて購入する際は、一度お店で採寸してもらうと安心ですね。
和装ブラジャー
「え、着物を着るのに専用のブラが必要なの?」と驚かれるかもしれません。実は、これ、とても重要なアイテムなんです。洋装ではバストを豊かに見せることが美しいとされますが、和装では逆。胸の凹凸をなだらかにして、鳩胸のようなすっきりとした胸元を作ることが、着物を美しく着こなすための秘訣です。
和装ブラジャーは、胸を「潰す」というよりは「押さえて平らにする」ためのもの。ワイヤーが入っておらず、伸縮性のある生地で胸全体を優しくホールドしてくれます。これを使うだけで、衿元がすっきりと決まり、帯の上に胸が乗ってしまう…なんてことも防げます。着姿が格段に変わるので、ぜひ試してみてほしいアイテムの一つです。
美しい着姿の土台作り:補正用品
着物は、もともと反物という一枚の布から作られています。そのため、凹凸の少ない「寸胴(ずんどう)」体型の方が、シワができにくく美しく着こなせると言われています。そこで登場するのが「補正」です。足りない部分にタオルや専用のパッドを当てて、体型を理想の円筒形に近づけていきます。
補正パッド・タオル
補正は、着付けの中でも特に個人の体型が影響する部分。痩せている方は腰回りや鎖骨の上、お尻の上などに、逆にふくよかな方はみぞおちの窪みなどに補正を入れることが多いです。目的は、着物と体の隙間をなくし、着崩れを防ぐこと。そして、帯がシワなく美しく巻けるように土台を整えることです。
補正には、市販されている専用の補正パッドを使う方法と、自宅にあるフェイスタオルを使う方法があります。専用パッドは、あらかじめ着物向きの形に作られているので手軽ですが、タオルなら自分の体型に合わせて厚みや当てる場所を細かく調整できるというメリットがあります。どちらが良いというわけではなく、自分の体型や、着付けの先生の方針によっても変わってきます。最初のうちは、薄手のタオルを何枚か用意しておくと、色々と対応できて便利ですよ。
着物を固定する紐たち:腰紐・伊達締め
着付けは、布を体に巻き付けて、紐で結んで固定していく作業の連続です。ここで使う紐たちにも、それぞれ役割があります。
腰紐(こしひも)
その名の通り、腰のあたりで結んで、長襦袢や着物の丈を合わせたり、衿合わせを押さえたりするための紐です。着付けの中で何度も登場する、まさに必須アイテム。最低でも3本、できれば5〜6本あると安心です。
素材は様々ですが、初心者さんにおすすめなのは毛100%の「モスリン」です。適度な摩擦があって滑りにくく、キュッと締まって緩みにくいのが特徴。正絹や化繊のものもありますが、まずは基本のモスリンから使ってみるのが良いでしょう。幅や長さも色々あるので、自分にとって使いやすいものを見つけてくださいね。
伊達締め(だてじめ)
腰紐で仮留めした上から、さらに広い面で押さえるための小物です。長襦袢の衿合わせや、着物のおはしょり(お腹周りの折り返し部分)を整えて、着崩れしないように固定するのが主な役割。腰紐が「点」で押さえるのに対し、伊達締めは「面」で押さえるイメージです。
素材は、キュッと締まる正絹の「博多織」が最も格が高いとされていますが、化繊やマジックテープ式の手軽なものもあります。マジックテープ式のものは「和装ベルト」とも呼ばれ、結ぶ必要がないので初心者さんにはとても便利です。長襦袢用と着物用に、合計2本用意するのが一般的です。
ちなみに、胸元の衿合わせを固定するためのゴムベルト「コーリンベルト」という便利グッズもあります。これを使うと衿元がはだけにくくなるので、持っていると重宝しますよ。
着物の下にもう一枚:長襦袢(ながじゅばん)
肌襦袢の上、着物の直下に着る、着物と同じ形をした下着です。省略されることもありますが、フォーマルな場では必須。これ一枚で着姿の印象が大きく変わる、重要なアイテムです。
長襦袢の役割
長襦袢には、大きく分けて3つの役割があります。一つ目は、肌襦袢と同様に着物を汗や皮脂の汚れから守ること。二つ目は、滑りを良くして着物の着心地を向上させること。そして三つ目が、袖口や振りからチラリと見える部分や、衿元でお洒落を表現することです。特に衿元は、後述する「半衿」を付けることで、顔周りの印象を大きく左右します。
長襦袢の種類
素材は、フォーマルには光沢と滑らかさのある正絹が使われますが、普段着用やお手入れの手軽さを重視するなら、ポリエステルなどの化学繊維も非常に便利です。また、季節によって裏地の有無が異なり、裏地のある「袷(あわせ)」と、裏地のない「単衣(ひとえ)」、そして夏用の「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」などがあります。着物と季節感を合わせるのが基本です。
半衿(はんえり)
ここが、長襦袢の一番のお洒落ポイント!長襦袢の衿に、上から縫い付けて使う替え衿のことです。顔に一番近い部分なので、ここにどんな色や柄の半衿を持ってくるかで、全体の印象がガラリと変わります。また、直接肌に触れる部分なので、汚れたら半衿だけを取り外して洗濯できるという、実用的な役割も担っています。
最もベーシックで、どんな着物にも合わせられるのが、真っ白な「塩瀬(しおぜ)」の半衿です。礼装では白が基本。普段着なら、色物や柄物、刺繍が入ったものなどで自由にコーディネートを楽しめます。素材も、季節に合わせて縮緬(ちりめん)、絽(ろ)など様々。半衿を付け替えるだけで、同じ着物でも全く違う雰囲気に見えるので、ぜひ色々と試してみてください。縫い付けるのが苦手な方のために、テープやファスナーで簡単に付け替えられる便利なタイプもありますよ。
美しい衿元を作るために:衿芯(えりしん)
半衿を付けた長襦袢の衿の中に、すっと差し込んで使う、少し硬さのある芯のことです。これを入れることで、衿元がよれずに、ぴしっと美しいカーブを保つことができます。衿元は着姿の「命」とも言われるほど重要な部分。衿芯があるのとないのとでは、仕上がりの美しさが全く違います。
素材はプラスチック製のものが主流ですが、通気性の良いメッシュタイプや、体に沿いやすいソフトタイプなどもあります。舟形(カーブしているもの)と真っ直ぐな棒状のものがありますが、一般的には舟形の方が衿の形を作りやすいと言われています。長さや硬さも様々なので、自分の好みや長襦袢との相性で選んでみましょう。
帯の形を美しく保つ:帯まわりの小物
帯を結ぶ際にも、それを美しく見せるための小物が活躍します。これらを使うことで、帯結びが崩れにくくなり、一日中きれいな形をキープできます。
帯板(おびいた)・前板(まえいた)
帯の1周目と2周目の間に差し込んで使う、薄い板状の小物です。主な役割は、帯の前面にシワが寄るのを防ぐこと。これがないと、動いているうちに帯が波打ってしまい、だらしない印象になってしまいます。特に柔らかい帯を締める時には必須です。
ベルトが付いていて胴に固定できるタイプと、ベルトなしで帯の間に差し込むだけのタイプがあります。ベルト付きの方が安定感がありますが、差し込むタイプの方が手軽です。夏用には通気性の良いメッシュ素材のものもあります。長さも色々で、脇の方までしっかりカバーしたい場合は長めのものを、お腹周りだけをすっきりさせたい場合は短めのものを選ぶと良いでしょう。
帯枕(おびまくら)
主に、お太鼓結びなど、背中で結ぶ帯結びの「山」の部分を形作るために使います。帯枕に帯揚げをかけて背中に固定し、その上に帯をかぶせて形を作っていきます。これを使うことで、帯結びが立体的でふっくらとした美しい形に仕上がります。
形や大きさ、厚みは様々で、作りたい帯結びの雰囲気によって使い分けます。例えば、フォーマルな場では少し大きめで高さのあるものを、カジュアルな場では小ぶりで自然な形のものを選ぶことが多いです。また、振袖の変わり結びなどでは、特殊な形の帯枕を使うこともあります。素材も、ウレタンやガーゼを巻いたものなどがあります。これもまた、自分の体型や目指す着姿に合わせて選ぶのがポイントです。
もっとお洒落に!装いを彩るコーディネート小物
ここからは、着付けに必須というわけではないけれど、加えることで着物姿がぐっと華やかになったり、格が上がったりする「装飾的」な小物たちをご紹介します。ここがコーディネートの腕の見せどころ!自分らしさを表現する楽しいパートです。
帯の中心で輝く:帯締め(おびじめ)
帯の中央でキュッと結ばれ、着物姿のアクセントになる紐状の小物。もともとは帯を固定するための実用的なものでしたが、今では装飾的な意味合いが非常に強い、コーディネートの要となるアイテムです。
帯締めの役割と格
帯締め一本で、全体の印象が引き締まったり、逆に柔らかくなったりします。組紐の組み方によって種類が分かれており、断面が平たい「平組(ひらぐみ)」、丸い「丸組(まるぐみ)」、四角い「角組(かくぐみ)」などがあります。一般的に、幅が広く厚みのある平組の方が格が高いとされています。
また、金糸や銀糸が織り込まれているものは、礼装用として扱われます。逆に、カジュアルな場面では、色やデザインで自由に遊ぶことができます。着物や帯の色から一色取ったり、あえて反対色を持ってきてアクセントにしたりと、組み合わせは無限大です。
帯締めの結び方
結び方にも様々な種類があり、結び方一つで表情が変わります。基本の「本結び」をマスターすれば、大抵の場面で対応できます。その他にも、飾り結びとして「藤結び」やリボンのように結ぶアレンジなど、たくさんのバリエーションがあります。房の扱い方もポイントで、きれいに整えておくと、細部まで気を配っている印象を与えます。
TPOに合わせた選び方
留袖や訪問着などの礼装には、白や金銀を基調とした、格の高い平組の帯締めを合わせるのが決まりです。一方、小紋や紬などの普段着には、色の綺麗な丸組や、デザイン性のある三分紐(さんぶひも)に帯留め(おびどめ)を合わせるなど、自由な発想で楽しむことができます。季節感を色で表現するのも素敵ですね。夏には涼しげなレース組のものもあります。
衿元と帯の架け橋:帯揚げ(おびあげ)
帯枕を包んで隠し、帯の上辺からチラリと覗かせる布のことです。衿元の半衿と、帯の帯締めとの間に位置し、全体の色彩をつなぐ重要な役割を担っています。
帯揚げの役割と格
帯揚げの見せ方一つで、若々しい印象にも、しっとりと落ち着いた印象にも見せることができます。若い方は少し多めに、年齢を重ねた方は控えめに見せるのが一般的、とされていますが、これも絶対のルールではありません。
素材は、シボ(表面の凹凸)のある「縮緬(ちりめん)」や、光沢のある「綸子(りんず)」が代表的です。礼装では、地紋の入った白や淡い色のものが基本。金糸や銀糸が入っているものや、絞り染めのものも格が高いとされています。
帯揚げの結び方・見せ方
結び方は、帯の中でしっかりと結んで固定します。基本は「本結び」ですが、きれいに畳んで左右から差し込むだけでも大丈夫。大切なのは、外から見える部分が美しく整っていることです。左右対称に、ふっくらと、しかしだらしなくならないように見せるのがポイント。この「塩梅」がなかなか難しいのですが、練習あるのみです!
TPOに合わせた選び方
礼装では、前述の通り白や淡い色のものを。訪問着や付け下げなど、準礼装の場合は、着物の色に合わせて淡いパステルカラーなどを選ぶと上品です。小紋などの普段着では、帯締めと同様に、色の組み合わせを自由に楽しめます。帯や着物の中の一色とリンクさせると、コーディネートにまとまりが出やすいですよ。夏には、透け感のある「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」の素材のものを使います。
胸元にもう一枚の彩りを:重ね衿(かさねえり)・伊達衿(だてえり)
着物の衿に重ねて、何枚も着物を着ているかのように見せるための装飾的な衿のことです。「重ね衿」と「伊達衿」は基本的に同じものを指します。顔周りをパッと華やかにし、装いの格を上げる効果があります。
もともとは、十二単のように着物を何枚も重ねて着ていた時代の名残で、現在ではその「重ね」を簡略化したものとして使われています。振袖や訪問着、色無地など、華やかさを出したいフォーマルな着物によく合わせます。
選び方のポイントは、着物や帯との色の調和です。着物と同系色の濃い色を選ぶと引き締まった印象に、反対色を選ぶとモダンで個性的な印象になります。金やパール、レースなどがあしらわれたものもあり、成人式や結婚式のお呼ばれなどで大活躍します。着物に直接縫い付けたり、専用のピンで簡単に固定したりして使います。
さあ出かけよう!外出時に必要な和装小物
着物を着て家の中にいるだけ…ということは少ないですよね。お出かけする際には、履物やバッグ、そして季節に応じた羽織ものなどが必要になります。これらも立派な和装小物であり、コーディネートの重要な要素です。
足元のお洒落:履物
和装の履物は、主に「草履」と「下駄」に分けられます。TPOや着物の格に合わせて選びます。
草履(ぞうり)
フォーマルからカジュアルまで、幅広く使われる和装の基本的な履物です。「台」と呼ばれる本体部分と、指で挟む「鼻緒(はなお)」で構成されています。台の高さや素材、鼻緒のデザインによって格が決まります。
一般的に、台が高いほど格が高いとされています。礼装用の草履は、金や銀、白を基調としたエナメル素材や、佐賀錦などの布地で作られたものが多く、バッグとお揃いのセットになっていることもあります。普段着用には、コルク台やウレタン台など、歩きやすさを重視したものや、デザイン性の高いものがたくさんあります。
サイズ選びのコツは、かかとが台から1cmほどはみ出すくらいが「粋」で美しいとされています。あまり大きいサイズを選ぶと、歩くときに裾を蹴ってしまい、着崩れの原因になることもあるので注意が必要です。鼻緒は、最初は少しきつく感じるかもしれませんが、履いているうちに自分の足に馴染んできます。痛い場合は、鼻緒を少し揉んで柔らかくすると履きやすくなりますよ。
下駄(げた)
主に浴衣や、木綿、紬といったごくカジュアルな着物に合わせる履物です。桐などの木でできており、カラコロと鳴る音が夏の風情を感じさせますね。底に「歯」があるのが特徴で、「二枚歯」のものが一般的ですが、現代では底が平らで歩きやすい「右近下駄(うこんげた)」なども人気です。
鼻緒のデザインが非常に豊富で、ここでお洒落を楽しむことができます。素足で履くのが基本ですが、足袋を履いて合わせることもあります。
持ち物どうする?:バッグ
洋服の時と同じく、和装でもバッグは必要です。着物の格や行く場所に合わせて選びましょう。
和装バッグの種類と格
礼装用のバッグは、小ぶりで上品なものが基本です。帯地を使った「利休バッグ」や、ビーズや佐賀錦などで作られたクラッチバッグなどが代表的です。草履とセットになっていると、統一感が出てよりフォーマルな印象になります。
普段のお出かけであれば、もう少し自由度が高まります。A4サイズが入るような少し大きめの和装バッグや、竹や藤で編まれた「かごバッグ」、布製の「あづま袋」など、選択肢は様々。洋装用のバッグでも、シンプルなデザインのものであれば和装に合わせられることもあります。
選び方のポイント
まずは、着物や草履との素材感や色味を合わせると、ちぐはぐにならずにまとまります。例えば、エナメルの草履なら光沢のあるバッグ、布製の草履なら布製のバッグ、といった具合です。また、見た目だけでなく、その日に必要な持ち物が入るかどうかの容量もしっかりチェックしましょう。サブバッグとして、折りたためるエコバッグなどを持っておくと何かと便利です。
体温調節とお洒落に:羽織もの
特に秋冬や、夏の冷房対策として、羽織ものは欠かせません。洋服でいうところのカーディガンやジャケット、コートのような役割を果たします。
羽織(はおり)
ジャケット感覚で気軽に着られる、最もポピュラーな羽織ものです。室内でも着たままで良いとされています。前を閉じずに、胸元で「羽織紐(はおりひも)」を結んで着るのが特徴。この羽織紐も、玉や飾りがついたものなどデザインが豊富で、付け替えて楽しむことができます。
道行(みちゆき)・道中着(どうちゅうぎ)
これらは、洋服でいう「コート」にあたるもので、主に防寒や塵除けのために屋外で着用し、室内に入る前に脱ぐのがマナーです。衿の形が四角く、スナップボタンなどで前を閉じるのが「道行」、着物のように前を打ち合わせて紐で結ぶのが「道中着」です。道行の方が、よりかっちりとした印象になります。
ショール・ストール
特に冬の寒い時期に重宝するのが、ウールやカシミヤ、ファーなどのショールです。衿元を温めるだけでなく、見た目にも華やかさや季節感をプラスしてくれます。夏場でも、冷房が効いた室内などでは、レースや麻素材の薄手のストールがあると便利です。
あると便利な名脇役たち:その他の小物
必須ではないけれど、持っていると「お、分かってるな」と思われるような、気の利いた小物たちです。
扇子(せんす)・末広(すえひろ)
よく混同されがちですが、役割が異なります。「扇子」は、夏場に実際に開いてあおぎ、涼をとるための実用的なもの。一方、「末広(すえひろ)」は、黒骨に金銀の地紙を張った祝儀用の扇子で、礼装(特に黒留袖や色留袖)の際に帯の左側に差して飾りとして用います。広げてあおぐことはしません。「末広がり」で縁起が良い、という意味が込められています。
髪飾り(かみかざり)
ヘアスタイルを彩る重要なアクセサリー。特に振袖姿では、豪華な髪飾りが欠かせませんね。TPOに合わせて選ぶのが大切で、金属や象牙などでできた伝統的な「簪(かんざし)」や「櫛(くし)」、お花をモチーフにしたコサージュタイプ、パールやビーズを使ったモダンなものまで多種多様です。着物の色や柄と合わせたり、季節の花を取り入れたりすると、より一層お洒落になります。
懐紙(かいし)・懐紙入れ
懐(ふところ)に入れておく、和紙を折りたたんだものです。ハンカチ代わりに口元や手を拭いたり、お茶席でお菓子をいただく際の受け皿にしたり、ちょっとしたメモを書いたりと、一枚あると様々な場面でスマートに対応できる万能アイテムです。これをすっと取り出す姿は、とても上品で素敵に見えます。様々な色や柄の懐紙があり、それらを美しい「懐紙入れ」に入れて持ち歩くのも、和装の楽しみの一つです。
季節感を大切に!季節ごとの和装小物
着物の世界では、季節感が非常に重視されます。着物本体だけでなく、小物も季節に合わせて「衣替え」をすることで、より本格的で洗練された着こなしになります。
涼やかに過ごす:夏の和装小物
蒸し暑い日本の夏を、少しでも快適に、そして見た目にも涼やかに過ごすための工夫が、夏の和装小物には詰まっています。
夏用の素材とは?
夏の小物のキーワードは「透け感」と「通気性」です。代表的な素材に「絽(ろ)」と「紗(しゃ)」があります。どちらも薄手で透け感のある織物ですが、絽は横方向に、紗は全体的に隙間が空いているのが特徴です。また、天然素材の「麻(あさ)」も、その吸湿性と速乾性から夏の素材として非常に人気があります。これらの素材は、半衿、帯揚げ、長襦袢などに使われます。
夏小物への衣替え
一般的に、6月と9月は裏地のない「単衣(ひとえ)」の季節、7月と8月は最も涼やかな「薄物(うすもの)」の季節とされています。これに合わせて小物も衣替えをします。
- 半衿・帯揚げ・帯締め:絽や紗、麻の素材のものに変えます。帯締めも、涼しげな印象のレース組のものなどがおすすめです。色も、白や水色、ミントグリーンなど、寒色系の淡い色を選ぶと見た目にも涼やかです。
- 長襦袢:これも絽や麻素材のものに。着物から透けて見えることもあるので、色合わせも重要です。
- 草履:台が麻やパナマ素材で編まれたものは、見た目にも涼しく、夏のお洒落にぴったりです。
- その他:竹やアタで編まれたかごバッグ、涼しげな柄の日傘や扇子なども、夏の和装を彩る素敵なアイテムです。
温かくお洒落に:冬の和装小物
着物は首元や足元が冷えやすいので、冬は防寒対策が重要になります。温かいだけでなく、冬ならではのお洒落を楽しめる小物もたくさんあります。
冬用の素材とは?
冬の小物のキーワードは「保温性」と「見た目の温かみ」です。羽織ものやショールには、ウールやカシミヤがよく使われます。また、足袋や半衿には、起毛していて肌触りが温かい「ネル」素材のものがあります。ベルベットや別珍(べっちん)といった、光沢と深みのある起毛素材も、冬らしい高級感を演出してくれます。
防寒対策の小物
寒い日のお出かけも、これらの小物を活用すれば快適に過ごせます。
- 羽織・コート類:前述の道行や道中着、羽織は冬の必須アイテム。着物用のコートは、洋装のコートよりも袖が大きく作られています。
- ショール・ファー:大判のショールは、衿元を温めるだけでなく、華やかさもプラスしてくれます。成人式などで見かけるファーのショールは、見た目にも温かくゴージャスな印象です。
- 手袋:和装に合わせるなら、肘まであるようなロングタイプの手袋がエレガントです。
- 足袋カバー・防寒草履:冷えやすい足元対策として、足袋の上から重ねて履くストレッチ素材の「足袋カバー」があります。また、雨や雪の日でも安心なように、爪先にカバーが付いた「防寒草履」も便利です。
長く大切に使うために:和装小物の収納と手入れ
お気に入りの和装小物を、いつでも美しい状態で使えるように、日頃のお手入れと正しい収納方法を知っておくことも大切です。ちょっとした手間で、小物の寿命はぐっと延びますよ。
ごちゃごちゃにならない!小物の収納方法
気づくと増えていく和装小物。いざ使おうと思った時に「あれ、どこにしまったっけ?」とならないように、整理整頓を心がけましょう。
分類して収納するコツ
一番のコツは、種類別に分けて収納することです。例えば、「着付けに使う紐類(腰紐、伊達締めなど)」「帯まわりの小物(帯締め、帯揚げ)」「肌着類(肌襦袢、足袋など)」といった具合にグループ分けします。そうすることで、着付けの際に必要なものを一式まとめて取り出せて非常にスムーズです。
収納用品としては、湿気に強い桐の小物入れや、プラスチック製の仕切り付きケースが便利です。特に帯締めや帯揚げは数が増えがちなので、一つ一つが見えるように収納すると、コーディネートの際に選びやすくなります。100円ショップなどで手に入る仕切り板やケースを上手に活用するのも良い方法です。
型崩れを防ぐ工夫
小物によっては、しまい方にも一工夫必要です。
- 帯締め:房がばらばらにならないように、房の部分に専用の房カバーを付けたり、和紙などで優しく巻いてから収納しましょう。くるくると丸めて収納するのが一般的です。
- 帯揚げ:シワにならないように、きれいに畳んで収納します。
- 帯枕:上に重いものを乗せると潰れてしまうので、形が崩れないように注意が必要です。
- 草履:購入時の箱に入れて保管するのが基本です。長期間しまっておく場合は、時々箱から出して風通しをすると、カビや劣化を防げます。
次に使うときも気持ちよく:小物の手入れ方法
使用後のお手入れを習慣にすることで、汚れの定着を防ぎ、小物を長持ちさせることができます。
使用後のお手入れ
脱いだらすぐに仕舞わず、まずは状態をチェックしましょう。
- 肌着・足袋:肌に直接触れたものは、その都度洗濯するのが基本です。洗濯表示をよく確認してください。特に足袋の裏は汚れやすいので、ブラシなどでこすり洗いすると綺麗になります。
- 帯締め・帯揚げ:目立つ汚れがないか確認し、汗などの湿気を飛ばすために、ハンガーなどにかけて一晩ほど室内で陰干しします。この一手間で、カビやシミのリスクを減らせます。
- 長襦袢:特に半衿は皮脂やファンデーションで汚れやすい部分です。汚れが気になったら、半衿を取り外して手洗いしましょう。長襦袢本体も、汗をかいた場合は陰干しを。素材が化繊であれば自宅で洗えるものも多いです。
| 小物の種類 | お手入れのポイント |
| 肌着類(肌襦袢、裾よけ、足袋) | 使用の都度、洗濯する。洗濯表示を確認。 |
| 帯締め・帯揚げ | 使用後、汚れをチェックして一晩陰干しする。 |
| 長襦袢 | 半衿の汚れをチェック。汗をかいたら全体を陰干し。 |
| 草履 | 底の泥や汚れを拭き取り、陰干ししてからしまう。 |
長期保管前の注意点
シーズンオフなどで長期間しまっておく前には、特に念入りなお手入れが必要です。一度でも使用したものは、目に見えない汗や汚れが付着している可能性があります。汚れをそのままにして長期間保管すると、シミや黄ばみ、カビの原因になります。汚れが気になる場合は、専門のクリーニングに出すことを検討しましょう。
保管する際は、防虫剤を入れると安心です。ただし、着物用の防虫剤を使い、薬剤が直接小物に触れないように注意してください。種類の違う防虫剤を混ぜて使うと化学変化を起こしてシミの原因になることがあるので、必ず一種類に統一しましょう。年に一度、虫干しといって、乾燥した晴れた日に風通しをしてあげると、さらに良い状態を保てます。
まとめ:奥深い和装小物の世界を楽しもう!
いやはや、たくさんの和装小物がありましたね!ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。最初は「覚えることがいっぱい!」と圧倒されてしまうかもしれませんが、一つ一つの小物が持つ大切な役割や、そこに込められた先人たちの知恵を知ると、なんだかワクワクしてきませんか?
和装小物は、単に着付けを助ける道具というだけではありません。帯締め一本、半衿一枚で、着物全体の表情ががらりと変わる。そんな無限の可能性を秘めた、最高に楽しいお洒落のツールなんです。洋服でスカーフやアクセサリーを選ぶように、着物と小物のコーディネートを考える時間は、まさに至福のひととき。
この記事でご紹介した内容は、あくまで基本的な知識です。ルールやTPOはもちろん大切ですが、そればかりに縛られる必要はありません。まずは基本を押さえた上で、「自分ならどう合わせるかな?」「こんな組み合わせも面白いかも!」と、自由に発想を広げてみてください。その試行錯誤のプロセスこそが、あなただけの着物スタイルを育てていくのです。
さあ、奥深く、そして魅力あふれる和装小物の世界へ、本格的に足を踏み入れてみませんか?きっと、あなたの着物ライフが何倍にも豊かで楽しいものになるはずです。応援しています!

