はじめに:なぜ和装下着は大切なの?
こんにちは!着物好きの皆さま、そしてこれから着物に挑戦してみたいと思っている皆さま。成人式や卒業式、結婚式にお呼ばれした時など、人生の節目で着物に袖を通す機会って、なんだかんだありますよね。そんな特別な日のために用意した素敵な着物、どうせなら最高に美しく着こなしたいと思いませんか?
実は、着物姿の美しさを左右する隠れた主役、それが「和装下着」なんです。「え、下着なんて何でもいいんじゃないの?」なんて思っていたら、もったいない!実は、普段使っている洋装用の下着と和装下着とでは、その役割も形も全く違うんですよ。
和装下着には、大きく分けて2つの大切な役割があります。
- 着物姿を美しく見せるための「土台作り」
- 大切な着物を汗や皮脂などの「汚れから守る」
この2つの役割をしっかり果たしてくれるのが、和装下着。いわば、着物姿を支える「縁の下の力持ち」というわけです。見えない部分だからこそ、ここにこだわることで、着付けのしやすさ、着姿の美しさ、そして一日中着ていても疲れにくい快適さが、驚くほど変わってきます。
この記事では、そんな奥深い和装下着の世界を、種類や選び方、着付けのコツからお手入れ方法まで、まるっと徹底的に解説していきます。「何から揃えたらいいかわからない…」「洋服の下着じゃダメなの?」といった素朴な疑問にも、しっかりお答えしていきますよ。この記事を読み終える頃には、あなたも和装下着マスターになっているはず!特定の商品をおすすめするのではなく、あくまで「知識」として、あなたの着物ライフに役立つ情報だけを詰め込みました。さあ、一緒に和装下着の基本を学んで、もっと素敵な着物姿を目指しましょう!
知らないと損!和装下着の基本の「き」
まずは基本から。そもそも和装下着って、具体的にどんな仕事をしてくれるのでしょうか?その役割を知ることで、なぜ専用の下着が必要なのかが、きっと腑に落ちるはずです。
和装下着の役割って?
先ほども少し触れましたが、和装下着には大きく3つの役割があります。一つずつ、もう少し詳しく見ていきましょう。
役割1:美しい着姿の土台作り
これが和装下着の最も重要な役割と言っても過言ではありません。洋服は、体の曲線的なラインを活かすことで美しく見えるように作られていますよね。しかし、着物はその逆で、体の凹凸が少ない「寸胴(ずんどう)」な体型の方が、布が体に沿いやすく、シワも寄りにくく、すっきりと美しく着こなせるのです。
そこで活躍するのが和装下着。特に「和装ブラジャー」や「補正パッド」は、バストのボリュームを抑えたり、ウエストのくびれや鎖骨の窪みなどを埋めたりして、体をなだらかな筒状のラインに整える役割を担います。この「補正」というひと手間が、着物のシルエットを劇的に変えるのです。まるで建物を建てる前の基礎工事のようなもの。しっかりとした土台があるからこそ、その上に美しい着物が映えるというわけですね。
役割2:着物を汗や皮脂から守る
ご存知の通り、正絹などの着物は、洋服のように気軽に自宅で洗濯することができません。クリーニングに出すのも、時間とお金がかかります。だからこそ、大切な着物を長持ちさせるためには、肌から出る汗や皮脂が直接着物に付着するのを防ぐ必要があります。
肌に一番近い部分で汗をしっかりと吸い取ってくれるのが「肌襦袢(はだじゅばん)」や「裾除け(すそよけ)」です。特に夏場や、暖房の効いた室内で長時間過ごす時などは、思った以上に汗をかいています。吸湿性・速乾性に優れた和装下着を一枚着ておくだけで、着物に汗ジミができてしまうのを防ぎ、着物を清潔に保つことができるのです。これは衛生的であると同時に、着物への愛情表現とも言えるかもしれませんね。
役割3:着崩れを防ぐ
「朝、あんなに綺麗に着付けてもらったのに、夕方には襟元が崩れてきちゃった…」なんて経験、ありませんか?実は、着崩れの原因の一つに、下着と長襦袢、あるいは長襦袢と着物の生地の相性(滑りやすさ)が関係していることがあります。
体にフィットする和装下着を身につけることで、肌と長襦袢の間に適度な摩擦が生まれ、長襦袢が安定しやすくなります。また、裾除けを着用することで足さばきが良くなり、歩いたり座ったりする動作で裾が乱れるのを防いでくれます。つまり、和装下着は、着付けた時の美しい状態をできるだけ長くキープするためのサポーターのような役割も果たしてくれるのです。一日中、安心して美しい立ち居振る舞いができるのは、和装下着のおかげなんですね。
洋装下着じゃダメなの?
「役割はわかったけど、やっぱり手持ちの洋服の下着で代用できないかな?」そう考える方も多いでしょう。もちろん、絶対にダメというわけではありませんが、やはり「専用品」にはそれなりの理由があります。洋装下着がなぜ和装に向かないのか、具体的に見ていきましょう。
ワイヤー入りブラジャーの場合
洋装ブラジャーの多くは、バストを高く、中央に寄せて、美しい谷間を作ることを目的としています。そのためのワイヤーや厚いパッドが、着物の世界では逆に仇となってしまうのです。ワイヤーが胸の形を強調しすぎて、着物の前身頃に変なシワが寄ってしまったり、帯の上に胸が乗っかってしまい、老けた印象に見えてしまったり…。さらに、ワイヤーがみぞおちや脇に当たって、長時間着ていると苦しくなってしまうこともあります。目指す方向性が「立体的」な洋装ブラと、「平面的」な和装ブラとでは、真逆の作りになっているんですね。
普通のショーツの場合
普段使いのショーツで特に問題になるのが、お尻のラインです。着物はヒップラインが意外とくっきり出てしまうため、ショーツのゴムのラインが響いてしまうことがあります。また、ローライズのショーツだと、かがんだ時などに背中から見えてしまう可能性も。さらに、着物は股上が深いので、おへその下あたりまでしっかりカバーしてくれる股上が深めのタイプの方が、お腹周りの冷え対策にもなり、安心感があります。
キャミソールやカップ付きインナーの場合
「ブラの代わりにカップ付きキャミソールなら良いのでは?」と思うかもしれません。確かにワイヤーがない分、通常のブラよりはマシかもしれません。しかし、多くの場合、バストを平らに抑えるほどの補正力はありません。また、一番の問題は「襟元」です。着物は後ろの襟を抜いて(下げて)着るため、洋服と同じ感覚でキャミソールを着ていると、襟足からインナーの肩紐や生地が丸見えになってしまい、せっかくの着物姿が台無しになってしまいます。和装下着は、この「衣紋(えもん)抜き」をしても見えないように、襟ぐりが前も後ろも深く作られているのです。
このように、それぞれのパーツを見ていくと、やはり洋装下着では代用が難しく、着姿を損ねてしまう可能性が高いことがわかります。快適に、そして美しく着物を楽しむためにも、ぜひ専用の和装下着を揃えることを検討してみてくださいね。
【完全ガイド】和装下着の種類と選び方
さて、和装下着の重要性がわかったところで、次は具体的にどんな種類があるのかを見ていきましょう。たくさんあって難しそうに感じるかもしれませんが、役割ごとに整理すれば大丈夫。ここでは、上半身、下半身、そして補正に使うもの、と大きく3つのカテゴリーに分けて、それぞれの特徴と選び方のポイントを詳しく解説します。
上半身に着るもの
まずは、上半身の土台を作るアイテムたちです。汗取りと補正が主な役割になります。
肌襦袢(はだじゅばん)
肌襦袢は、長襦袢の下に直接肌に触れるように着る、いわば和装の「肌着」です。一番の役割は、汗や皮脂を吸い取って、その上に着る長襦袢や着物を汚れから守ること。着物を着る上での、最も基本的なアイテムと言えます。
- 役割:汗取り、汚れ防止。
- 素材:素材によって着心地や機能性が大きく変わります。
- 綿(コットン):最も一般的で、肌触りが良く吸湿性に優れています。オールシーズン使えて、お値段も手頃なものが多いのが魅力。ご家庭で気軽に洗濯できるのも嬉しいポイントです。
- ガーゼ:綿の一種ですが、より柔らかく、肌がデリケートな方にもおすすめです。吸水性が高く、通気性も良いので、特に赤ちゃんの肌着に使われることからもその優しさがわかりますね。
- クレープ・楊柳(ようりゅう):生地の表面に凹凸(シボ)があるのが特徴で、肌に触れる面積が少ないため、汗をかいてもベタつきにくく、サラッとした着心地が続きます。主に夏用の素材として人気があります。
- 麻:天然素材の中でも特に吸湿性・速乾性に優れ、熱を逃がしやすい性質があるため、夏の最高級素材として知られています。独特のシャリ感があり、涼やかな着心地は格別です。
- 機能性化学繊維:最近では、吸汗速乾、接触冷感、発熱保温など、様々な機能を持った化学繊維の肌襦袢も増えています。お手入れが簡単なのもメリットです。
- 選び方のポイント:まずは吸湿性に優れた素材を選ぶことが基本です。その上で、季節や自分の肌質に合ったものを選びましょう。もう一つの重要なポイントが襟ぐりの深さ。着物は後ろの衣紋を抜くため、肌襦袢の襟ぐりが浅いと、着物の襟足から見えてしまいます。購入する際は、必ず襟ぐりが前も後ろも深く開いているかを確認しましょう。袖の長さも、筒袖やレース袖など色々ありますが、基本的には着物の袖からはみ出ない筒袖が一般的です。
和装ブラジャー
和装ブラジャーは、着物姿特有の美しい胸元を作るための補正下着です。洋装ブラがバストを「盛る」のに対し、和装ブラは胸全体のボリュームを「抑え」、なだらかな鳩胸(はとむね)を作ることを目的としています。
- 役割:胸のボリュームを抑え、平らでなだらかなラインに整える。
- 特徴:
- ノンワイヤー:ワイヤーが入っていないため、体を締め付けにくく、長時間でも比較的楽に過ごせます。
- フルカップ:胸全体をすっぽりと覆うデザインで、揺れを防ぎ、全体を均一に抑えます。
- 伸縮性のある素材:ストレッチ素材でできており、体にフィットしやすくなっています。
- パッドポケット:補正用のパッドを入れるポケットが付いているものも多く、鎖骨下などの窪みを補正するのに役立ちます。
- 選び方のポイント: सबसे重要なのはサイズ感です。締め付けすぎると苦しくなってしまいますし、緩すぎると補正効果が得られません。基本的には洋装ブラのサイズを参考にしますが、メーカーによってサイズ感が異なるため、必ずサイズ表(トップバストとアンダーバスト)を確認しましょう。鳩胸を作るためのパッドが付属しているものもありますが、自分の体型に合わせて取り外しできるタイプが便利です。また、着脱のしやすさもポイント。背中にホックがあるタイプが一般的ですが、前でファスナーを閉じるフロントファスナータイプは、着付けに慣れていない方や腕が後ろに回りにくい方には特におすすめです。素材は、肌に直接触れるものなので、肌触りの良いものや、夏場は吸汗速乾性のあるものを選ぶと快適です。
肌着とブラが一体になった「スリップ」タイプ
肌襦袢と裾除け、あるいは和装ブラと肌襦袢と裾除けが一体になった、ワンピース型の便利な下着です。「着物スリップ」や「和装スリップ」などと呼ばれます。
- 役割:肌着、裾除け(時にはブラも)の役割を一枚でこなす。
- メリット:
- 着付けが楽:何枚も重ね着する必要がないので、着付けの時間を短縮できます。初心者の方には特に心強い味方です。
- 着ぶくれしにくい:重ねる枚数が少ない分、腰回りがスッキリします。
- お腹周りがもたつかない:セパレートタイプだと気になる腰回りの重なりがないため、すっきりとしたシルエットになります。
- 選び方のポイント:どの機能が一体になっているかを確認しましょう。「肌襦袢+裾除け」のタイプが最もベーシックですが、これに「和装ブラ」の機能まで付いたものもあります。ただし、ブラ機能付きのものは体型によってはフィットしにくい場合もあるため、試着できるなら試着するのがおすすめです。素材は、上半身が綿で、滑りを良くしたいスカート部分がキュプラやポリエステルなどの異素材コンビになっているものが多く、機能的です。また、静電気防止加工が施されているかも重要なチェックポイント。特に冬場は静電気で裾が足にまとわりつきやすいので、この加工があるとないとでは快適さが大違いです。丈の長さも、自分の身長に合わせて選びましょう。
下半身に着るもの
次に、下半身の着心地と足さばきをサポートするアイテムです。
裾除け(すそよけ)
裾除けは、長襦袢の下に着用し、主に下半身の汗取りと足さばきを良くする役割を担います。長襦袢が直接足にまとわりつくのを防ぎ、歩きやすくしてくれます。また、長襦袢の裾が汚れるのを防ぐ役割も。
- 形状:大きく分けて2つのタイプがあります。
- 腰巻タイプ:一枚の布を腰に巻き付けて紐で結ぶ、伝統的なスタイルです。着付けに少し慣れが必要ですが、自分の体型やその日の体調に合わせて締め具合を調整しやすいのがメリットです。素材は、滑りが良く静電気が起きにくいキュプラ(ベンベルグ)などが一般的です。
- パンツタイプ(ステテコ):ズボン下のように履くタイプ。後述のステテコとほぼ同じものです。着脱が簡単で、特に現代ではこちらのタイプを選ぶ人も増えています。
- 選び方のポイント:腰巻タイプを選ぶ際は、滑りの良い素材かどうかが最重要ポイントです。キュプラやポリエステルなどがおすすめです。丈は、くるぶしが見えるくらいの長さが一般的。長すぎると裾から見えてしまい、短すぎると役割を果たせないので、自分の身長に合ったものを選びましょう。ウエスト部分が綿、裾さばきに関わる部分が滑りの良い生地、といった切り替えタイプも機能的です。
和装用ショーツ
先ほど「洋装下着じゃダメなの?」の項でも触れましたが、やはり専用のショーツがあると安心です。必須アイテムとまでは言いませんが、あると便利な一品です。
- 役割:着物に下着のラインが響くのを防ぐ。
- 特徴:
- 股上が深い:おへその下あたりまでしっかりカバーしてくれるので、かがんでも見えにくく、冷え対策にもなります。
- 装飾が少ない:レースやリボンなどの凹凸のある装飾が少なく、つるりとしたデザインのものが多いです。
- 足ぐりのカット:ヒップラインに響きにくいように、足ぐりのカットが工夫されていたり、シームレス(無縫製)になっていたりします。
- 選び方のポイント:お手持ちのショーツで代用する場合は、なるべく装飾がなく、股上が深めのシームレスタイプを選ぶと良いでしょう。色は、白や淡い色の着物、特に夏物の浴衣などを着る際に透けないように、ベージュ系を選んでおくと万能です。
ステテコ・パンツ型裾除け
裾除けのパンツバージョンで、近年とても人気が高まっているアイテムです。特に、活動的に動く日や、汗をかく季節には絶大な支持を得ています。
- 役割:汗取り、足さばきの向上。特に太ももの汗対策に有効。
- メリット:
- 足さばきが抜群に良い:左右の足が独立しているので、大股で歩いたり、階段を上り下りしたりするのも楽々です。
- 汗をかいても快適:太ももの間に汗をかいても、生地が吸収してくれるので、足にまとわりつく不快感がありません。夏場はもちろん、意外と冬でも暖房の効いた室内では重宝します。
- 着付けが簡単:ただ履くだけなので、腰巻タイプの裾除けのように着付けに悩む必要がありません。
- 選び方のポイント:素材は、夏場なら吸湿・速乾性に優れた綿クレープや麻、機能性化学繊維がおすすめです。冬場なら、保温性のある素材を選ぶと防寒対策になります。丈の長さは、ひざ下丈、七分丈、くるぶし丈など様々です。着る着物や用途に合わせて選びましょう。例えば、短い丈の着物なら、裾から見えないように短めの丈を選ぶといった配慮が必要です。
補正に使うもの
最後に、理想の着物ボディラインを作るための、いわば「造形」アイテムです。これらを使いこなせるようになると、着物姿が格段にレベルアップします。
補正パッド・補正具
補正具は、体の凹凸を埋めて、なだらかな寸胴体型に整えるための専門アイテムです。これを使うことで、シワのない美しい着姿と、着崩れのしにくさを手に入れることができます。
- 役割:体の窪みを埋め、着物が綺麗に乗る土台を作る。
- 使用箇所:人それぞれの体型によって補正する場所は異なりますが、主に以下のような箇所に使います。
- 鎖骨周り:痩せている方は鎖骨の上が窪んでいることが多く、ここにパッドを入れると胸元にシワが寄りにくくなります。
- みぞおち:胸の下の窪みを埋めることで、胸からお腹にかけてのラインをなだらかにします。
- ウエスト・腰回り:ウエストのくびれを埋めて、帯が安定するようにします。お尻の小さい方は、ヒップの上あたりにパッドを入れてボリュームを出すこともあります。
- 種類:
- パッドタイプ:補正したい箇所に直接当てて使う、小さなパッドです。マジックテープなどで肌襦袢や補正ベストに固定できるタイプが多く、ピンポイントで調整しやすいのが特徴です。
- ベストタイプ:肌襦袢のように着るベスト型で、必要な部分にパッドを差し込むポケットが付いているものです。パッドがずれにくく、一枚で上半身全体の補正がしやすいのがメリットです。
- ウエストパッド(腰ぶとん):腰回りをぐるりと一周して、くびれとお尻の上の窪みを同時に補正するアイテムです。
- 選び方のポイント:まずは自分の体型を客観的に把握することがスタート地点です。鏡の前に立ち、どこに窪みがあるか、どこを埋めれば筒状に近づくかを確認しましょう。初心者のうちは、何から揃えればいいか分からないと思うので、まずはウエスト周りを補正できるパッドから試してみるのがおすすめです。素材は、通気性の良いメッシュ素材のものなどもあり、季節に合わせて選ぶとより快適です。
タオルでの代用は?
「専用の補正具を買うのはちょっと…」という場合、昔ながらのタオルを使った補正ももちろん可能です。フェイスタオルを畳んで、ウエストのくびれや鎖骨の窪みなどに当てる方法です。
- メリット:なんといっても手軽で、費用がかからないこと。自分の体型に合わせてタオルの厚みを自由に調整できるのも利点です。
- デメリット:タオルは厚みがあるため、特に夏場は暑く感じやすいです。また、ゴワゴワしてしまい、着姿が不自然に着ぶくれしてしまうことも。しっかりと固定しないと、動いているうちにずれてしまい、着崩れの原因になる可能性もあります。
結論として、着物を着る頻度が少ない方や、まずはお試しで補正をしてみたいという方は、タオルでの代用から始めてみるのも良いでしょう。しかし、着物を着る機会が多い方や、より美しい着姿、快適な着心地を求めるのであれば、やはり専用の補正具を一つ持っておくと、その違いに驚くはずです。薄くて軽く、かつ効果的に補正できるように設計されているので、投資する価値は十分にあると言えるでしょう。
TPOで使い分ける!季節・シーン別 和装下着の選び方
基本的な和装下着の種類がわかったところで、次は応用編です。着物には季節や格によって様々な種類があるように、それに合わせる下着もTPOに応じて使い分けることで、より快適で美しい着物ライフを送ることができます。ここでは、「季節」と「着物の種類・シーン」という2つの軸で、最適な下着の選び方を考えていきましょう。
季節に合わせた選び方
日本の美しい四季。それは着物の楽しみの一つですが、気温や湿度の変化は着心地に大きく影響します。季節に合った素材の下着を選ぶことは、一日を快適に過ごすための重要なポイントです。
夏(6月~9月頃、絽や紗、浴衣など)
なんといっても日本の夏は高温多湿。着物にとっては過酷な季節です。夏を乗り切るための和装下着選びのキーワードは「涼しさ」「吸汗性」「速乾性」の三つです。
- ポイント:とにかく涼しく、汗対策を万全に!
- 下着の素材:
- 麻(あさ):天然繊維の中で最も涼しいと言われる素材。吸湿性・発散性に優れ、肌に熱がこもりにくく、汗をかいてもすぐに乾きます。独特のシャリ感が肌に張り付かず、快適な着心地です。
- 綿クレープ・楊柳(ようりゅう):生地に凹凸があるため肌への接触面積が少なく、サラリとした肌触りが特徴。吸水性も良く、風通しが良いので、昔から夏の肌着として愛用されています。
- 高機能化学繊維:最近注目されているのが、スポーツウェアなどにも使われる高機能素材。「接触冷感」「吸汗速乾」「抗菌防臭」などの機能を備えたものが多く、お手入れも簡単です。
- おすすめアイテム:汗を大量にかくことを想定したアイテム選びが吉。
- 汗取りパッド付き肌着:特に汗をかきやすい脇の下にパッドが付いている肌襦袢は、汗ジミ対策に非常に有効です。
- ステテコ:もはや夏の必需品と言ってもいいかもしれません。太ももの汗をしっかり吸い取り、裾のまとわりつきを防いでくれるので、歩行時の快適さが格段にアップします。
- 麻の補正パッド:補正具も、通気性の良いメッシュ素材や麻素材のものを選ぶと、熱がこもりにくくなります。
- 注意点:夏物の着物は生地が薄く、透けやすいものが多いです。下着の色は、白よりも肌の色に近いベージュ系を選ぶのが鉄則。その方が断然透けにくくなります。濃い色の下着は絶対に避けましょう。
冬(11月~3月頃、袷の着物など)
屋外は寒く、屋内は暖房で暖かい、という温度差が激しいのが冬。着物自体が暖かい袷(あわせ)なので、着込みすぎると着ぶくれしたり、室内で汗をかいてしまったりすることも。キーワードは「保温性」と「薄さ」です。
- ポイント:暖かく、でも着ぶくれしないように。
- 下着の素材:
- ネル:綿を起毛させた、柔らかく暖かい生地。肌触りが良く、保温性に優れています。冬の定番素材の一つです。
- 発熱・保温機能のある化学繊維:体から出る湿気や汗を熱に変換する機能を持つ、いわゆる「あったかインナー」。薄手なのに暖かいのが最大の特徴で、着ぶくれを防ぎたい冬の和装には最適です。
- おすすめアイテム:防寒を意識しつつ、動きやすさも確保しましょう。
- 七分袖の肌襦袢:手首まで袖があると、暖かい反面、動いた時に着物の袖口から見えてしまう可能性があります。少し短めの七分袖や五分袖を選ぶと安心です。
- 保温性のあるステテコやレギンス:足元の冷えは全身に響きます。暖かい素材のステテコや、足首まである和装用のレギンスなどを履くと、防寒効果が高まります。
- 注意点:「寒いから」といって何枚も重ね着するのはNG。着姿がずんぐりむっくりになってしまいますし、動きにくくもなります。薄手で高機能な素材を一枚プラスする、という考え方がスマートです。ストールや羽織など、外側で温度調節するのもお忘れなく。
春・秋(4,5月、10月頃、袷や単衣の着物など)
気候が良く、着物を楽しむのに最適な季節。しかし、日中は暖かくても朝晩は冷え込んだりと、一日の寒暖差が大きい時期でもあります。この時期は、通年使えるベーシックな下着を基本に、その日の気温に合わせて微調整するのが賢い選択です。
- ポイント:基本の組み合わせで、気温の変化に対応。
- 下着の素材:
- 綿(コットン):吸湿性と通気性のバランスが良く、どんな季節にも対応できる万能選手。この時期の基本素材として最適です。
- 通年タイプの化学繊維:温度調節機能や、季節を問わず快適な着心地を保つことを目指して作られた素材もあります。
- 調整方法:基本の「肌襦袢+裾除け」の組み合わせを軸に考えます。汗ばむ陽気の日なら、裾除けを夏物のステテコに変えてみる。少し肌寒い日なら、保温性のあるインナーを一枚足すか、レギンスを履く、といった具合に、パーツで調整するのがおすすめです。
着物の種類やシーンに合わせた選び方
着ていく場所や着物の「格」によっても、ふさわしい下着の選び方は変わってきます。より美しく、そしてマナーに沿った着こなしを目指しましょう。
振袖(成人式・結婚式など)
未婚女性の第一礼装である振袖。袖が長く、帯結びも華やかで、非常に重厚感のある装いです。この豪華な着姿に負けない、しっかりとした土台作りが何よりも重要になります。
- ポイント:念入りな補正と、動きやすさへの配慮。
- 下着の選び方:
- 補正はいつもより念入りに:振袖は帯を高い位置で、かつ豪華に結びます。そのため、ウエスト周りの補正をしっかり行い、帯がずり落ちてこないように安定させることが大切です。鎖骨周りや胸元の補正も、若々しく張りのある胸元をすっきりと見せるために重要です。
- 襟ぐりが深いものを選ぶ:振袖は、若々しさを出すために衣紋をぐっと深く抜いて着付けます。そのため、肌襦袢は後ろの襟ぐりが大きく開いたものを選ばないと、見えてしまう可能性大です。振袖用として売られている肌着は、この点が考慮されています。
- トイレのしやすさも考慮:振袖は袖が長く、着崩れも心配なため、トイレに行くのが一苦労。ワンピースタイプのスリップは着付けは楽ですが、トイレの際には裾をすべて持ち上げなければなりません。肌襦袢と裾除けが分かれているセパレートタイプの方が、裾除けだけをめくれば良いため、トイレが楽だという声も多いです。これは個人の好みや慣れにもよるので、どちらが自分に合っているか考えてみましょう。
留袖・訪問着(フォーマルな場)
既婚女性の第一礼装である黒留袖や、準礼装の訪問着など、フォーマルな場で着用する着物です。求められるのは、品格と落ち着きのある、完璧な着姿です。
- ポイント:清潔感と、寸分の隙もない美しいシルエット。
- 下着の選び方:
- 色は白か薄い色で統一:これは和装の基本マナーです。特に留袖は黒地なので目立ちにくいですが、淡い色の訪問着などの場合、下着の色が透けて見えてしまうのは非常にみっともないことです。清潔感のある白か、もしくは透けにくいベージュ系で揃えましょう。
- 補正で体のラインを完璧に整える:ごまかしのきかないフォーマルな着物こそ、補正の力が試されます。年齢とともに出てくる体型の変化を補正でカバーし、シワひとつない、なだらかで品格のあるボディラインを作り上げましょう。特に帯周りの補正は重要です。
浴衣
夏のカジュアルな着物である浴衣。長襦袢を着ずに直接着ることが多いため、下着の選び方がダイレクトに着心地と見た目に影響します。
- ポイント:透け対策と汗対策がすべて!
- 下着の選び方:
- 浴衣スリップが便利:肌着と裾除けが一体になった「浴衣スリップ」は、一枚着るだけで汗取りと透け防止の役割を果たしてくれるので非常に便利です。キャミソールとペチコートで代用する方もいますが、襟ぐりの開きなどを考えると、やはり専用品がおすすめです。
- 色はベージュが最強:白地の浴衣はもちろん、濃い色の浴衣でも、強い日差しの下では足のラインなどが意外と透けて見えるものです。下着の色で最も透けにくいのは、白ではなく自分の肌の色に近いベージュです。一枚持っておくと、どんな色の浴衣にも対応できます。
- 和装ブラで胸元すっきり:浴衣は帯を低い位置で締めるため、胸が大きいと帯の上に胸が乗ってしまい、だらしない印象になりがちです。和装ブラで胸元をすっきりと抑えるだけで、粋で涼しげな着姿になります。
普段着の着物(小紋・紬など)
お稽古事やショッピングなど、日常的に楽しむ着物です。フォーマルな着物ほど気負う必要はありませんが、やはり快適さは重要です。
- ポイント:着心地の良さと、お手入れのしやすさ。
- 下着の選び方:
- 洗濯機で洗える素材が活躍:普段着であれば、汗をかくことも多いでしょう。正絹よりも木綿やポリエステルなどの洗える着物を着る機会も増えるかもしれません。下着も同様に、気兼ねなく洗濯機で丸洗いできる綿素材や化学繊維のものが重宝します。
- 着付けが楽なアイテムを:毎日着る方にとっては、着付けの手間は少しでも省きたいもの。和装ブラ機能付きのスリップや、履くだけでOKのステテコなど、時短できる便利なアイテムを積極的に取り入れると、着物ライフがより気軽に、長続きしやすくなります。
これで完璧!和装下着の正しい着付け方ステップガイド
さて、自分に合った和装下着を選んだら、次はいよいよ着付けです。「難しそう…」と身構えなくても大丈夫。正しい順番と、ちょっとしたコツさえ押さえれば、誰でも綺麗に着ることができます。ここでは、基本的な和装下着の着付け方を、ステップバイステップでご紹介します。
着付けの順番
下着を着る順番は、美しく着付けるための大切なプロセスです。基本的には、下から上へ、という流れを意識すると覚えやすいかもしれません。ここでは、ブラジャー、補正、肌襦袢、裾除けがそれぞれ分かれているセパレートタイプを着用する場合の、最も基本的な順番をご紹介します。
- ステップ1:足袋(たび)を履く
意外に思われるかもしれませんが、一番最初に足袋を履いてしまうのがおすすめです。全ての着付けが終わってからだと、前かがみになるのが大変で、せっかく着付けた襟元などが崩れてしまう可能性があるからです。最初に履いておけば、後の心配がありません。
- ステップ2:和装ブラジャー・ショーツを着ける
まずは土台の土台から。洋装の下着と同じように、和装用のショーツとブラジャーを身につけます。この時、和装ブラジャーは胸をしっかり潰して、なだらかなラインになっているか鏡でチェックしましょう。
- ステップ3:補正具(必要な場合)を着ける
次に、自分の体型に合わせて補正をします。タオルや補正パッドを、ウエストのくびれ、鎖骨の窪み、ヒップの上など、必要な箇所に当てていきます。補正ベストを着る場合は、このタイミングです。補正具が動いているうちにずれないよう、紐で結んだり、マジックテープで固定したりして、体にフィットさせましょう。
- ステップ4:裾除けを着ける
下半身の肌着、裾除けを巻いていきます。腰骨の少し上あたりで、右側(下前)を先に体に巻き付け、次に左側(上前)を重ねて、紐をウエストでしっかりと結びます。上前が少し上になるように(裾つぼまりになるように)巻くと、歩いた時に裾さばきが良くなります。
- ステップ5:肌襦袢を着る
最後に上半身の肌着、肌襦袢を着ます。Tシャツのようにかぶるか、前の打ち合わせを合わせて着ます。この時、一番大切なのが「衣紋(えもん)を抜く」ことです。後ろの襟ぐりを、こぶし一つ分くらい下に引いて、うなじが見えるようにします。こうすることで、この後に着る長襦袢や着物の襟が綺麗に収まります。肌襦袢の裾は、裾除けの内側に入れるのが一般的ですが、外に出す着付け方もあります。ごわつきが気になる方は内側に入れるとすっきりします。
もし、肌襦袢と裾除けが一体になった「和装スリップ」を着る場合は、順番が少し変わります。「ステップ1:足袋」→「ステップ2:和装ブラジャー・ショーツ」→「ステップ3:補正具」までは同じで、その次にスリップを着用する、という流れになります。一体型なので、着付けがとても簡単ですね。
各アイテムの着付けのコツ
ただ順番通りに着るだけでなく、ちょっとしたコツを知っているだけで、仕上がりの美しさと着心地が格段にアップします。各アイテムの着付けのポイントを見ていきましょう。
和装ブラジャー
ポイントは「潰して、平らにする」意識を持つこと。着け終わったら、鏡の前で横を向いてみてください。胸のトップの高さが抑えられ、胸からお腹にかけてのラインが、ストンと直線に近くなっていればOKです。もし胸が潰れきらずに谷間ができてしまう場合は、ブラジャーと胸の間にガーゼや薄いタオルを挟んで、隙間を埋めるとうまくいきます。
補正具
補正は「やりすぎない」ことが大切です。あくまで目的は「窪みを埋める」ことであって、「太らせる」ことではありません。タオルを何枚も重ねてガチガチに固めてしまうと、不自然なシルエットになり、かえって着崩れの原因にもなります。鏡を見ながら、少しずつ足したり引いたりして、自分にとっての「ちょうど良い」なだらかなラインを見つけましょう。補正具がずれないように、肌襦袢の上から伊達締めなどで軽く押さえておくのも一つの手です。
裾除け(腰巻タイプ)
裾除けを巻く時、下前(先に巻く右側)の裾を、上前(後に巻く左側)よりも少しだけ短めに(持ち上げて)巻くのがプロの技。これを「裾つぼまり」と言い、歩く時に裾が邪魔にならず、足さばきが格段に良くなります。また、紐を結ぶ位置は、おへその少し下、腰骨のあたりが基本です。あまり上で結ぶと、帯の下でゴロゴロしてしまいますし、下すぎるとずり落ちてきてしまいます。
肌襦袢
肌襦袢の段階で、しっかりと衣紋を抜いておくことが、美しい襟元を作るための最大の秘訣です。ここで抜けていないと、上に長襦袢や着物を重ねた時に、無理やり後ろに引っぱることになり、胸元がはだけてしまう「襟詰まり」の原因になります。肌襦袢を着たら、背中の中心(背中心)を体の真ん中に合わせ、襟を後ろにぐっと引きます。その後、前の打ち合わせを合わせ、胸元がはだけないように整えれば完璧です。
これらの手順とコツをマスターすれば、和装下着はもはやあなたの強力な味方。美しい着物姿への第一歩は、この下着の着付けから始まります。最初は時間がかかっても、焦らず丁寧に。何度か練習するうちに、きっとスムーズに着られるようになりますよ。
長く使うために。和装下着のお手入れと保管方法
お気に入りの着物を長く大切に着るために、それを守る和装下着もきちんとお手入れしてあげたいですよね。肌に直接触れるものだからこそ、常に清潔な状態を保ちたいもの。ここでは、意外と知らない和装下着の正しい洗濯方法と、次の出番まで綺麗に保つための保管のコツをご紹介します。
洗濯の基本
「和装下着って、なんだか特別なお手入れが必要そう…」なんてことはありません。多くは綿素材などでできているので、基本的には洋服のデリケートな衣類と同じように考えれば大丈夫。いくつかのポイントを押さえるだけで、生地を傷めずに長持ちさせることができます。
ステップ1:何よりもまず「洗濯表示」を確認!
これは和装下着に限りませんが、衣類を洗う前の大原則です。タグに付いている洗濯表示マークを必ず確認しましょう。「洗濯機OK」「手洗いのみ」「水洗い不可」など、その衣類に合った洗い方が記されています。特に、レースなどの装飾が付いているものや、麻などのデリケートな素材は注意が必要です。この一手間を惜しまないことが、失敗を防ぐ一番の近道です。
ステップ2:手洗いか、洗濯機か
- 手洗いがおすすめなもの:和装ブラジャー(特にパッド部分)、レースを多用した肌襦Dばん、麻や絹などの繊細な天然素材のものは、型崩れや生地の傷みを防ぐために、できるだけ優しく手洗いするのがおすすめです。洗面器などにぬるま湯を張り、おしゃれ着用の中性洗剤を溶かして、優しく押し洗い(もみ洗いはNG!)します。その後、洗剤が残らないように丁寧にすすぎます。
- 洗濯機で洗う場合:綿素材の肌襦袢や裾除け、ステテコなど、比較的丈夫なものは洗濯機でも洗えます。その際は、必ず洗濯ネットに入れること。下着をそのまま洗濯機に入れると、他の衣類と絡まって生地が伸びたり、傷んだりする原因になります。特に紐が付いている裾除けなどは、ネットが必須です。コースは「手洗いコース」や「ドライコース」などの弱水流モードを選びましょう。
ステップ3:洗剤の選び方
肌に直接触れるものなので、肌に優しい洗剤を選びたいですね。一般的な弱アルカリ性の粉末洗剤は洗浄力が高いですが、デリケートな素材には強すぎる場合があります。色あせや生地の傷みを防ぐためにも、おしゃれ着用の中性洗剤(エマールやアクロンなど)を使うのが安心です。漂白剤や蛍光増白剤が入っている洗剤は、生成りや淡い色の下着の風合いを損ねてしまう可能性があるので、避けた方が無難です。
ステップ4:干し方のコツ
洗い終わった後の干し方にも、長持ちさせるためのポイントがあります。
- 脱水は短めに:洗濯機で脱水する場合は、1分程度の短い時間で済ませましょう。長く脱水すると、シワが強く付いてしまい、生地を傷める原因になります。手洗いの場合は、絞らずにタオルで挟んで水分を吸い取る「タオルドライ」がおすすめです。
- 形を整えて陰干し:干す前に、手でパンパンと叩いて大きなシワを伸ばし、全体の形を整えます。特に肌襦袢は、襟元や袖の形をきちんと整えておくと、乾いた後の仕上がりが綺麗です。
- 直射日光は避ける:日光に直接当てて干すと、紫外線によって生地が傷んだり、黄ばんだりする原因になります。必ず風通しの良い場所で陰干しするようにしましょう。
保管のコツ
シーズンオフなどで長期間しまっておく場合は、次に気持ちよく着られるように、正しい方法で保管することが大切です。湿気や虫食いは着物の大敵ですが、それは和装下着にとっても同じです。
しっかり乾かすのが大前提
少しでも湿気が残ったまま保管してしまうと、カビや黄ばみ、嫌な臭いの原因になります。これは絶対に避けたいところ。洗濯後はもちろん、一度着用しただけで洗わない場合でも(あまりおすすめはしませんが)、一晩は部屋干しするなどして、汗などの湿気を完全に飛ばしてからしまいましょう。
保管場所
和装品の保管場所として理想的なのは、調湿効果のある桐のタンスです。しかし、誰もが持っているわけではありませんよね。もちろん、プラスチックの衣装ケースや、クローゼットの引き出しでも問題ありません。大切なのは、湿気がこもりにくく、風通しの良い場所を選ぶことです。ぎゅうぎゅうに詰め込むのではなく、ある程度ゆとりを持って収納しましょう。
防虫剤・除湿剤を上手に使う
長期間保管する場合は、防虫対策も忘れずに行いましょう。ウールや絹を食べる虫は、綿や麻も食べてしまう可能性があります。着物と一緒に保管する場合は、着物用の防虫剤(ピレスロイド系など、ガスの出ないタイプがおすすめ)をタンスや衣装ケースの隅に入れておきましょう。その際、防虫剤が直接下着に触れないように注意してください。
また、梅雨の時期などは除湿剤を併用するのも効果的です。定期的に引き出しを開けて空気を入れ替えてあげるだけでも、カビの予防になります。
このように、少しの手間をかけてあげるだけで、和装下着はぐっと長持ちします。大切な着物の一部として、ぜひ下着も愛情をもってお手入れしてあげてくださいね。
ギモン解決!和装下着のQ&A
ここまで和装下着の基本から応用までを解説してきましたが、それでもまだ「こういう時はどうしたらいいの?」といった細かい疑問が残っているかもしれません。そこで最後に、多くの方が抱きがちな質問をQ&A形式でまとめてみました。あなたの「?」が、ここでスッキリ解決するかもしれません!
Q. サイズ選びで失敗しないためには?
A. 洋服のサイズを参考にしつつも、過信は禁物。必ず各商品のサイズ表を確認することが一番のポイントです。
和装下着は、洋服のようにS, M, Lといった表記だけでなく、身長やヒップ、バストサイズなど、より細かいサイズ展開がされていることが多いです。特に和装ブラジャーは、トップバストとアンダーバストの両方のサイズを測り、メーカーが提示しているサイズ表と照らし合わせることが重要です。「胸を平らに抑える」という目的を果たすためには、フィット感が何よりも大切。締め付けが苦しいのは論外ですが、迷った場合は少し大きめを選ぶよりは、しっかりフィットして補正効果が得られる方を選ぶのが一般的です。肌襦袢やスリップは、身長を基準に丈の長さを選ぶと失敗が少ないでしょう。
Q. 初心者はまず何を揃えればいい?
A. まずは「肌襦袢」「裾除け」「和装ブラジャー」の3点が、和装下着の三種の神器と言えるでしょう。
この3つがあれば、ひとまずどんな着物にも対応できます。もし、もっと手軽に始めたい、着付けの手間を少しでも減らしたいという方であれば、これらが一体になった「和装スリップ(ブラ機能なし、または付き)」を一枚用意するのがおすすめです。補正に関しては、最初から専用品を揃える必要はありません。まずはご自宅にあるフェイスタオルで代用してみて、「もっとここを補正したいな」「タオルだと暑いな」と感じるようになってから、必要に応じて専用の補正パッドを買い足していく、というステップで全く問題ありません。
Q. 妊娠中でも着物を着たいのですが、下着はどうすれば?
A. お腹を締め付けない工夫が必要です。安全を最優先し、必ず専門家やかかりつけ医に相談しましょう。
マタニティ用の和装下着も存在しますが、種類はあまり多くありません。代用としては、お腹周りを締め付けないワンピースタイプの肌着や、前合わせではなく前ボタンで開け閉めできるタイプの肌着などが比較的楽でしょう。裾除けは、腰紐の位置をお腹の膨らみの下で調整できる、昔ながらの腰巻タイプの方が融通がきく場合があります。和装ブラジャーも、アンダーバストが大きくなる変化に対応できる、伸縮性の高いものを選ぶと良いでしょう。ただし、妊娠中の着物の着用は、母体にも赤ちゃんにも負担がかかる可能性があります。着付け師さんや、かかりつけのお医者様によく相談し、決して無理はしないでください。
Q. 男性の和装下着は女性と違うの?
A. はい、基本的な役割は同じですが、形状や種類が異なります。
女性の和装下着が「体を筒状に補正する」ことを一つの目的としているのに対し、男性の場合は、よりシンプルです。基本となるのは、上半身に着る「肌襦袢(半襦袢)」と、下半身に履く「ステテコ」です。肌襦袢は、汗取りのために着るVネックやUネックのシャツのような形状のものが一般的です。ステテコは、女性用と同様に足さばきを良くし、汗で袴や着物が足にまとわりつくのを防ぎます。女性のように体型を補正することはあまり一般的ではありませんが、痩せ型の方がお腹周りにタオルなどを巻いて、帯の座りを良くすることはあります。
Q. 本当に専用の下着じゃないとダメ?代用できるものは?
A. 絶対にダメ、というわけではありませんが、着姿の美しさ、着心地の良さ、着崩れのしにくさを考えると、やはり専用品がベストアンサーです。
これまでも解説してきた通り、専用品には専用品たる理由があります。しかし、「一度きりしか着ないから」「とにかく手軽に済ませたい」という場合に、考えられる代用品はいくつかあります。
- 和装ブラの代用:ワイヤーの入っていない、ホールド力の強いスポーツブラや、カップの入っていないハーフトップなど。ただし、胸を「潰す」力は専用品に劣ります。
- 肌襦袢の代用:襟ぐりが前後ともに大きく開いているバレエ用のインナーや、襟ぐりを自分でカットしたTシャツなど。普通のキャミソールやTシャツでは、ほぼ間違いなく襟足から見えてしまいます。
- 裾除けの代用:滑りの良い素材のペチコートやキュロット。ただし、静電気が起きやすいものも多いので注意が必要です。
これらの代用品は、あくまで「急場しのぎ」と考えるのが良いでしょう。一度で良いので専用の和装下着を試してみると、その機能性の高さと快適さに、「もっと早く使えばよかった!」と感じる方が本当に多いんですよ。
まとめ:自分に合った和装下着で、もっと素敵な着物ライフを!
ここまで、和装下着の役割から種類、選び方、着付け、お手入れまで、本当にたくさんの情報をお伝えしてきました。長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございます!
もしかしたら、「下着だけでこんなに覚えることがあるの?」と、少し圧倒されてしまったかもしれません。でも、大丈夫。一番大切なことは、「和装下着は、美しい着姿と快適な一日を支える、とっても重要な縁の下の力持ちである」ということを知っていただくことです。
洋服で例えるなら、どんなに素敵なドレスを着ていても、サイズが合わない下着を着ていたらシルエットが崩れてしまうし、一日中気になって楽しめませんよね。それと同じで、着物も、見えない部分である下着にこそ気を配ることで、その魅力が最大限に引き出されるのです。
最初は基本のセットからで構いません。まずは一度、和装下着をきちんと身につけて、着物を着てみてください。すっと決まる襟元、シワのない帯周り、そして歩いた時のスムーズな足さばき…。きっと、今までとは違う着心地と着姿に、嬉しい驚きがあるはずです。
そして、着物に慣れてきたら、今度は季節やTPOに合わせて下着を選んでみる。夏には麻のステテコで涼しく、冬には保温インナーで暖かく。そんな風に下着を使い分ける楽しみも、着物上級者への第一歩です。
この記事が、あなたの和装下着選びの「教科書」となり、これからの着物ライフをより豊かで楽しいものにするための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。さあ、あなたにぴったりの和装下着を見つけて、自信を持って、もっともっと着物を楽しんでくださいね!

